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第6回目 谷口 正俊

タイトル(Will)強い絆を感じながら、一緒に生きていく
公開日2008年5月9日
公開番号第6回目
氏名谷口 正俊
会社名株式会社アクティブリッジ
役職専務取締役/(ベトナムリソース活用コンサルティング)
プロフィール

たにぐち・まさとし
1973年イタリア・ローマ生まれ。幼少期をフィリピンで過ごす。早稲田大学商学部卒業後、大手教育関連企業の株式会社ベネッセコーポレーションに入社。同社退社後、2000年7月、総合人材育成企業の株式会社ウィル・シードをパートナーとともに立ち上げ、同社代表取締役副社長に就任。まったく新しいタイプの体感型教育研修プログラムを全国の企業及び学校へ導入し、一躍注目を浴びる。講演者・研修講師としても活躍。2006年6月、同社副社長を退任後、株式会社アクティブリッジの設立に参加。同社にて、ベトナムの若者の育成事業と企業への派遣事業を中心に活躍中。日本とベトナムを往復する日々を送っている。
【株式会社アクティブリッジ ホームページ】 http://actibridge.com/http://actibridge.com/

Chapter 1.キャリアの軌跡

【終わることを前提としたとき、どう生きるのか?】

大学卒業後はベネッセという教育会社に入社しました。その後、26歳のとき、パートナーとともに、新しいタイプの体感型教育プログラムを提供するウィル・シードという会社を立ち上げました。人材育成という仕事を、両社でしてきました。その中で思ったことがあって。人は、いろんな気付きがきっかけになって成長する。当然、僕らが提供する研修プログラムの中で気付くことは可能だけれども、やっぱり、より大きな影響を受けるのは、自分がいる環境なのではないかと。僕が言うと少しおこがましいかもしれないけれど、僕も含めて、日本の良さ、義理人情とかものづくりの大切さとか家族を大事にするっていうこと、そんなことをキーワードに若者世代への最高の人材育成ができたらいいなと考えるようになりました。

きっかけはいくつかあるんですが。ひとつは、娘が生まれたことが大きくて。それまでは、30歳を過ぎても自分に子供がいないわけだから、たとえば実家なんかに帰ると自分が子供っていう感覚が捨てきれないわけですね。それが、娘が生まれて。その娘を連れて両親に会ったときに、あ、世代がいっこ動いたな、自分たちが親世代、そして子供がいて、いまやおじいちゃんおばあちゃん世代になった両親がいて。ということは、もう一つ世代が動いたら、この社会を中心となって動かすところから自分がいなくなる、つまり、終わりがあるんだなという感覚を、ものすごく強く持った。終わりがある。今日見えてる明日は、明日必ずしも見えるものじゃないんだなって。もうひとつは、創業したウィル・シードという会社を退任したこと。創業当時26歳だった僕からしたら、それはもう全身全霊をかけて、一生のものだという感覚でした。ところが、色々な経緯を経て退任することに決めたときに、ああ、あれほど一生だと思っていたものも、6年経つといろんなことが変わった。自分の価値観だったり、周囲の環境だったり。決してネガティブな意味ではなくて、「終わるんだな」、と思いました。つまり、始まると、終わるんだ、っていうこと。

そこから、終わることを前提としたときに、どんな生き方をするか?と考えるようになりました。極端だけど、僕自身が死んだとき、僕はいま死んじゃったんだけど、自分は大好きな仲間に恵まれた、奥さんにも娘にも恵まれた、誇りある仕事ができた、世の中に貢献できた、というようなことを心から思えて死ねる仕事にしようって、強烈に思うようになりました。

Chapter 2.「WILL」を見つけた、つながった

【自分にとって大切なキーワードを結ぶ仕事】

じゃあ一体、自分らしい仕事、自分にしかできない仕事って何だろうかと考えていたときに、キーワードがいくつか出てきました。まず一つ目は、「アジア」。小さい頃、父の仕事の関係でフィリピンに住んでいたことがあって、その後もアジアへのボランティア活動などを通じて、アジアって存在が自分にとって非常に親しいものであること。二つ目は「人材育成」。ずっと関わってきた仕事だし、人は気づきやきっかけ、機会があることによって学ぶことができる。それをサポートする価値は絶対にあると知っていること。最後三つ目は、「立ち上げや経営のノウハウ」です。会社を創業して、6年間増収増益を達成して事業的にひとつの形にできた、その経験を世の中に役立てたい。こんな3つのキーワードがありました。 そんなとき、知人を介して、いまの会社の社長である、ベトナム人のレ・ロンソンというパートナーに出会った。それまでの自分だったら「へえ、おもしろい人だね」でスルーしていたと思うけれど、このときは、考えていた様々なことと彼が実現しようとしていることがつながりました。

いまの仕事のビジネスモデルは、日本人とベトナム人が心からお互いを理解しあい尊重しあい、本当のパートナーとして仕事ができるまでの一連のプロセス作りです。ベトナムに日系企業で働く若者のための職業訓練学校を設立したのですが、この学校で日本で働くために必要な語学やスキル、マナーなどを学びます。日本の企業側は人材を求めてやってきます。そこまでだと単純なマッチングだけなのですが、私たちはベトナムから日本に実際やってきた方々について、引き続きキャリアサポートを提供しています。定期的なコーチングや生活のサポート、語学面でのサポート。雇用する企業側に対しても、単なる雇用関係を超えてパートナーとしてお互いを活かすにはどうしたらいいのか、マネジメントのコツも含めてお伝えし、お付き合いしています。互いの国、人の特徴をよく知った上で、いまの若者が将来ベトナムに帰国した後でさえもパートナーであれるようなプロセスです。本当の意味での架け橋を作る。しかもその架け橋は単なるモノや情報の媒介ではなくて、永続的なものです。

実際に、多くのベトナムの若者に触れると、彼らはまさに、高度成長期の日本人が持っていた素晴らしさを見せてくれます。勤勉、まじめで、義理人情に厚く、母国に貢献したいと願っている。そんなことを日々本気で実践しているベトナムの若者と触れ合うだけでも、これは一つの最高の人材育成になるのではないかと思います。だから、大きく捉えれば、いまの仕事を通じて自分は日本とベトナム両方の若者を育成する、そうなれたらいいなという想いがあります。

Chapter 3.「WILL」のルーツ

【「絆を感じながら一緒に働く」という仕事観のルーツはどこに?】

いまの仕事を貫くキーワードは「絆」なんです。うちの会社のキーワードでもあるんです。ベトナムの人たちとのコミュニケーションて、なんていうか、すごくベタで、リアルなんです。なぜかというと、彼らは、異文化間に横たわる大きな壁のことを理解しているからなんです。中国に占領され、アメリカとの戦争があり。色々な経緯を経て、異文化を超える難しさを知り尽くしている。たとえば、僕ら日本人の感覚だと、仕事の効率性が重要だから、用件だけを書いたメールで終わることがある。ところがベトナムの人とのやりとりでは違う。典型的な例で言うと、業務でチャットシステムを使ってやりとりするとき。そんなとき、いま現在すごくうまくいっていて仲が良くても必ず、「谷口さん、東京のお天気はどうですか?」「こちらはいま雨が上がり、虹がきれいですよ」「日本からいただいた絵本で、昨日子供がずっと歌を歌っていたんですよ」なんてことが入るんです。最初はいらいらしました。でも、ベトナムの人たちは、分かっている。元々異文化の大きな壁があるのだから、ちょっとでも気を抜くと終わってしまいかねないことを、経験的に分かっているんです。そんなリアルさ、なんていうか、ベタさ、絆をつなぐ瞬間が、一番僕にエネルギーをくれます。感情のやりとりがちゃんとある。だから、とても忙しくてもココロは忙しくならない。とても豊かに仕事をしている。

ビジネスの行き着く先としては、実際に日本とベトナムの人々が協働して、パートナーとして事業が興せるところまで持っていく計画で、既に2社設立をしました。なにより、ベトナムの人とパートナーシップを組むことで、日本人が本来持っている天性の才能、つまり相手を思いやるとか気遣うとかをしっかり発揮して、大切にしながら生きていけるようになれたらすごくいい。もちろん仕事なんだけど、同じ夢を求める者として、強い絆を感じながら一緒に生きていけるっていう。それがビジネスを促進する大きな要素でもあるし。

もちろん仕事だから、成果をだすことは大切で、目標でもある。だけど、にこだわる理由はふたつあって。ひとつは、創業した会社を辞めた直後のこと。当たり前っちゃそうなのかもしれないけど、誰も何も変わらないわけだよね。それまでと同じように、当たり前のように人間として深い話をしてくるし、ビジネスの話もいろいろ来る。だから、自分はちゃんと「谷口正俊」として人と向き合えていたんだなあって、それは安心した。こうやって生きていけばいいんだ、って思えた。あとひとつは、それに関連して、起こした会社のことをいろいろ考えた。その結果、振り返ってみて、「この事業戦略が失敗だった」っていう種類の後悔は、思いのほか、それほどなかった。でも、たとえば、日々あったことで、相談してきた部下に対してそのとき忙しくて100%真剣ではなかったかもしれない自分とか、ごくまれにあった魂を込めなかった研修とかが思い出されるわけ。それって、結局死ぬ瞬間には、人が本当に、振り返って残したいものは、どこまで人に誠実に向き合ったとか、本気で自分の想いをやり続けられたということであって、結果じゃないんだなって。それが僕のターニングポイントでの気付き。結果ももちろんだけど、人への誠実さ、プロセスそのものを真剣に追い求めることが人生なんだって、そう思っています。

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